これで10回目?
 
 
010

 落とし穴を飛び越えた先の、北側への細い通路はかなり長く続いている。先が一部見えなくなっているくらいだ。170フィート先で行き止まりというところか。
 しかしそんな事より先にすぐ近くのドアのほうが問題だ。西側の壁にドアが2つある。
 とりあえず近い方 (15フィート先) のドアから聞き耳と捜索。ついで遠い方 (30フィート先) も聞き耳と捜索。どちらも何もない。ここで毒と魔法の感知 (八回目と七回目)を行う。どちらの反応もない。くそ、また無駄打ちだ。
 
 とりあえず近い方のドアを遠くから開ける。
 反応はない。部屋の中を覗き込むと、数え切れないほど沢山のロウソクで照らされた明るい部屋だ。
 ふん、明るいのはいいが部屋の中が石像だらけなのは最悪だ。誰がどう見ても石化モンスターがいるだろう。俺は目をつぶり、左手もムチを抜いて二刀流で構えた。このままムチを 《第三の手》 にしてゆっくりと床を確かめながら部屋に侵入した。
 部屋に入らない、という選択肢はない。なぜなら宝石を捜さなければならないし、強力なモンスターのいる場所にこそ宝を隠すからだ。
 部屋に入りきったと同時に呪文を唱える声が聞こえた。同時にムチが壁に当たったかのように戻される。つまり壁系呪文で囲まれたのか。
「慎重だな。だが目を開けてよい。ワシは試験官じゃ」くそったれなジジイの声が聞こえる。
 手で視界を覆い、自分の足元だけを見るようにすると、意外なことに明るいままだった。つまり石の壁や鉄の壁でなく力場の壁という事だ Fuck! 壁系の最悪呪文だ (力場の壁は透明なため光が通ることから推理した) 。
「さて、そちに問い掛けるゆえ、しかと答えよ。
 正解すれば悪いようにはせぬ。しかし間違えばここにいる石像の仲間入りをしてもらう。
 こやつのようにな」
 ジジイがぺしぺしと叩いたのは騎士風の男の石像だ。ふん、今回の参加者の一人だ。
 口上を無視してムチを操り力場の範囲を確認すると、どうやら15フィート四方の檻のようだ。しかも天井まで届いている。これではどうあがいても抜け出せない。
 仕方なくジジイを睨むと満足そうにお喋りを再開した。
「コレの重量は、100ポンドに加えてこやつの体重の半分じゃ。ならば、いまのコレの重量は次のうちどれか? 100ポンド、150ポンド、200ポンド 」(100ポンドは45kgです)
 アホか。全くバカかこいつは。成人男性の体重が100ポンド以下という事はありえない。ハーフリングやノームじゃあるまいし。答えは200しかあり得ないだろうが。ふん、バカにしおって。
 200ポンドだと答えるとジジイは忌々しげに正解だと言った。そして懐から何か小さな物を取り出すと、正解者への褒美だといった。これは試験官からの正式な褒美だから危険な物ではないと。
 ジジイが何か呪文を唱えて姿を消すと、すぐに力場の壁が無くなった。
 一歩進んでムチを伸ばして残していった物を取ると、金で出来た指輪だった。試験官ではなく競技を信用して指に填めてみると、なるほど確かに有益なアイテムだ。素早さが上がった感じがする(敏捷力+4)。
 とりあえず成果に満足して部屋を出た。
 
 今日はここまで。