03 どんなキャラがフツーっぽいのか? 01

 
 
 今回は前後編ですね。
 何がどうだったらフツーっぽいのかを、前編で立証して、後編でキャラを見せる感じ。
 では、前フリから入っていきましょう。
 
 
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 ドラクエトラマナって呪文がありましたよね? 地形からダメージ受けなくなる呪文。
 ファイナルファンタジーだとミニマムってありましたよね? 3だと小人の村に入ったり彫像の目の通路の先に進んだりする時に使いました。
 
 上記の例はどちらも、呪文の習得タイミングでイベント発生やストーリーの展開を制御するものでした。
 これはある意味、デザイナ側からの「ここにくるには 早い / 遅い ですよ」というメッセージです。
 ドラクエアバカムの例だと分かりやすいでしょうか?
 ※ SFC版だと、盗賊の鍵なしで進めると何人かのNPCの反応が変わります。
 
 そしてモンスターも、そのレベルのキャラクタの強さに釣り合うように用意されているのです。
 これって、どのゲームでも普通にやってることでしょう?
 こうなっていないRPGのほうがむしろ少ないと思うけど、どう?
 
 大抵のゲームがそうであるように、D&Dでもキャラの強さと敵の強さで
 苦労に見合うようにお宝や経験値がデザインされています。

 
 そりゃまぁ、テーブルトークコンピュータRPGと違いますから、ドラクエやFFの例のように単純に制御できるわけでもないし、運用の上手い下手で結果も変わってきます。
 でも、テーブルトークはテーブルトークなりに、デザイナが知恵を絞った仕掛けがあるのです。
 
 どんなキャラがフツーっぽいのか?
 言い換えれば、どんなキャラが標準的なのか?

  
 では、何を見るのか?
 基準はどこにあるのか?
 
 モンスターマニュアル(MM)とダンジョンマスターズガイド(DMG)です。
 
 MMなら関連項目の中に脅威度があり(7ページ)、
 DMGなら49ページに脅威度の指針があります。
 
 そう、D&Dではページを割いて、数字とコトバで分かるように説明されています。
 
 英語が苦にならないなら、発売もとのページへ行ってコラムを読んでみればいいのです。
 敵役として出すのに適切な数値はどのくらいだって、シナリオライターが書いています。
 数値をハッキリ出せる、明々白々なコトなんですッ!
 
 モンスターマニュアルの7ページに、脅威度という言葉の解説があります。
 これを視点を変えて言うと、次のようになります。
 
 脅威度3のモンスタは、3LVのPC4名と戦うのにフツーの強さです。
 
 脅威度3の代表例といえばオーガです。
 デザイナは、3LVの4名パーティ ―― 例えば ファイタ,ウイザード,クレリック,ローグの4名 ―― に対してオーガをぶつけるのは「フツー」だと考えているわけですね。
 
 ダンジョンマスターズガイドの49ページには表が付いていて
 パーティ4名の平均レベルとモンスターの脅威度で比較しています。
 
 そして、パーティ4名の平均レベルと同じ脅威度のモンスターを13体倒すとレベルアップするようにデザインしていると明記しています。
  ※ 実際には、13.4体必要です
 
 この上で、脅威度のほうが高ければ経験値は多くなり、低ければ少なくなるように決められています。
 
・脅威度を基準にして、レベルアップに必要な回数が決められていて、
・これを基準に、経験値量も上下する。
 
 これだけハッキリ、数字とルールで決まっているのです。
 
 これでも基準がないといいますか?
 これでもフツーが決められないといいますか?
 
 もちろん、言い訳や揚げ足取りは無数に出来るでしょう。
 
 しかし、そんな下らないネガティブキャンペーンを張る前に、DMG49ページの解説を読んでみてはいかがですか?
 
 脅威度の説明の中には、HPが満タンであり呪文も使っていない状態云々〜〜 のように書かれていますし、脅威度の実態に関しては、何らかの「しかけ」が働くことも示唆しています。
 
 実例を挙げれば、脅威度3の中でも、非実態であるシャドウは特定のアイテム*1を持っていないと苦戦を強いられますし、ドッペルゲンガーは主に戦闘以外の対応能力を求められます。ペガサスに至っては、そもそも脅威度の対象になるかどうかが疑問です。*2
 
 また、逆説的な見方をすることも示唆されています。
「歯ごたえのある遭遇」の説明の中で、パーティがリソース*3を減らすことなく解決できたら(つまり楽勝だったら)、それは歯ごたえのある遭遇ではないと説明しています。
 
 さあ、いかがですか?
 これでも、デザイナが提示するフツーが無いと言い張りますか?
 
 あなたの気に食うか食わないかではなく、紙に書かれた事実として、基準から導き出されるフツーはあるのです。
 
 
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 で、コレを理解したら、強いキャラでも弱いキャラでも勝手に作っていいですよ。
 
 だって、私はもちろんデザイナにも、あなたのキャラメイクをどうこう言う権利ないですから。
 
 ただ、周りのメンバーとのすり合わせはしてくださいね。
 D&Dは、みんなで協力して進めるゲームですから、みんなとの協調を忘れずに。
 
 強すぎて周囲から引かれるキャラを作るのも、
 弱すぎて周囲から役立たずと言われるのも、
 そりゃ、あなたの自由ですよ。
 
 あなたがプレイヤーではなくマスターの立場でも、大して違いはありません。
 
 基準を大幅に超えるモンスターを出せば 「あのマスターは無茶をする」 と言われますし、逆なら 「ぬるい」 と言われます。
「強いモンスターを手抜きして扱う」 「弱いモンスターを巧みに操作する」 という方法もありますが、これはゲームシステムの問題ではなく、使う側の運用の問題です。
 個人差の問題をツールのせいにするのは間違いですから、ここは勘違いしないようにしましょう。
 
※ プレイヤーLA(レベル調整値)を付けようって意見もたまに聞きますね。
  上手いプレイヤにはハンデを付けようって意味合いです。
  囲碁将棋で言えば、石を置いたりコマを落としたりするのと同じ考え方です。
 こう考えれば、運用の問題であって、デザイナの考えたバランスの問題とは違うことは明白です。
 
 素直に「周りに合わせてください」って頼めばいいのにね。
 これに関しては次々回で触れます。
 
 
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 ところで、脅威度に関してハナシをすると、反発する人が出てきます。
 彼らいわく 「適正な脅威度設定がされていないモンスターがいるから無意味」 なんだそうです。
 ひどいヤツになると 「オレは脅威度の数値を誤魔化せる裏技を知っているから、脅威度は無意味だ」 などといいます。
 
 多少マシな意見としては次の通りです。
「扱う人間の熟練度によって大きく異なるから適切ではない」
 これは、苦労させられる側、つまりプレイヤーの立場からすると、実際に違いがありますから切実な意見です。
 使う側、つまりマスターにしても、呪文の強さを十全に引き出せないと脅威度の数値が大きいだけのハリボテになってしまいますから、適切な扱いができていない状態になってしまいます。
 
 こういった意見にはどのように対応すれば良いのでしょうか?
 
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 えー、まず、人間のやることですから、ミスもあるし完璧じゃないです。
 でも、ミスがあるからといって、全体がダメだと言い出すのは理論が破綻しています。
 ゆすり、たかりの常套手段ですね。バカと下衆の使う手口です。
 
 それから、裏技って自分で言うな。
 分かっているなら、しなきゃいいだろ。
 自作自演とマッチポンプの一人三役をしておいて、システムがダメとか言い出しちゃうのは知能か精神が病んでいます。ハッキリ言えば基地外です。
 
 そして、マシな方の意見。
 これは運用の問題ですから、自分で何とかして下さい。
 …だってさ、明らかにシステムの手の出せない領域じゃん。
 
 テーブルトークに限らず、囲碁将棋でもテニスでも、あるいはその他のどんな趣味ジャンルでも、上手い下手による格差って、どうしようもなく発生するでしょう?
 そんなの、コッチ(システム)に言われても知らねーよっ!
 
 責任転嫁して、脅威度システム自体が悪いとか言うなよ。
 悪意がないとしても、難癖ですから、ソレ。
 例えば囲碁将棋とかなら、運用上の解決方法として、石を置いたりコマを落としたりするじゃん?
 運用上の問題は、運用で解決してよね。
 
 あ、それから、ここでも誤解の余地があるから注意を促しておきます。
 例えば囲碁だと、ゲームシステム的に先行が有利だからハンデが付けられているそうです。
 このルール処置は、ハンデをつけること自体は適切だという裏づけがあっての事です。どの位の差が適切かと言う部分は別にしてね。
 
 この例のように仕組み自体に必然性があって対応がとられている場合と、運用で解決すべき問題は別です。
 ごちゃ混ぜにしないように気をつけましょう。
 
 
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 さて、次回は実際に数値を出して、どのくらいが普通なのかを見ていきましょう。
 
「もっとフツーにやれフツーに(笑) 」
 
 と言える人になりましょうね。
 

*1:特定のアイテムなんてのは「一方ソ連は鉛筆を使った」ネタみたいなものです。
 追加サプリの幽霊油カプセルが… などと無いものねだりするのではなく、素直にマジックミサイルのワンドで解決出来たりします。

*2:生け捕りなどであれば、戦闘能力よりも目的の難易度から経験値を決めるでしょうから、強さとしての脅威度は経験値を与える目安として不適切ですよね?

*3:回数制限のある能力やアイテム全般を指す