古い新作、とでも言おうか…

 
 
 コンベにてとある新作をプレイ。
 これがまた… なんと言えばいいのだろうか難しいのだが、昔の上手いデザイナが、今の需要にあわせて作ったとか、そんな感じだ。
 
 上手いといったのはリップサービスでもなんでもなく、巧みに作ってあると思う。
 ただ、その上手さはイヤな方向に使われているのがとても残念。
 このイヤな方向ってのは多分にいまの需要なんだケド、それを真面目に追い求めちゃうてのは、それはそれでどうよと思う。
 
 簡単に説明すると、PK(プレイヤーキル)上等のシステムで、避ける手段が基本的に無いように作ってある。
 付属シナリオを2つプレイしたのだが、一つ目の協力型シナリオでも、全員が満足する(Win-Win になる)のはシステム初見では事実上の無理で、なおかつ推奨人数を超えると不可能。
 
 古いゲーマーに分かるように説明するなら、超人ロックのような対立構造があり、なおかつプレイ時には必ず善悪が含まれるようになっているのだ。
 
 テーブルトークなんだからマスタがシナリオを書く際に善悪を混ぜなければ良いと思うかもしれないが…
 
・巻頭のリプレイからして対立させている
 →読んだGMがそのように言っていた。つまり、そーゆーシステムだと示唆
 
・ルルブ付属の 「協力型」 サンプルシナリオで指定クラスの時点で対立させている
 →クラスの段階で対立ゲームだと示唆
 
・ルルブ付属の 「協力型」 サンプルシナリオのハンドアウトが、対立するように仕組まれている
 →PC個人の段階でも対立ゲームだと示唆
 
・「協力型」 サンプルシナリオのハンドアウトで、全員が満足することが(Win-Win の成立が)ほぼ不可能
 →上記と重複しているように見えるが、対立はクラスの放棄や個人のエゴで解決する場合が多々ある。例えば使命より愛を取るとかね。
 そうではなくて、これは全員のHOの「使命」と「真の使命」を全部つき合わせて意見を出し合ったが、PC5がいるとほぼ不可能だった。
 ちなみに推奨人数は4名。
 
 プレイ後に全員で知恵を合わせた結果、4名でプレイし「真の使命」を最初から開示して全員の行動を最適に組み合わせた上で判定に成功していれば、Win-Win の成立が可能。
 ただし「真の使命」は暴露/開示すると戦闘や判定を有利にする効能があるため、味方間の協調成立に使ってしまうと、ボス戦闘が厳しくなる。
 
 また、行動回数が極端に少ないシステム(一人1行動を3周するとボス戦)なので人数は多い方が都合がよいが、人数が多いと、まずクラス間の対立があり、次いで個人の使命や真の使命の対立があるため、多すぎるのもトラブルの元というか、最適解の解明や達成のハードルを上げてしまう。
 
ハンドアウトの例:
「使命」他のクラスにケンカを売る類の作戦指令
「真の使命」ボスは親の仇だ、倒せ
 
 見ての通り、真の使命を開示した上で、クラスを裏切る事を表明すれば他のクラスとの協力が可能。
 
 行動の自由度というか、判定の構造について触れると、一周に付き1行動しか取れないのに3周でラスボス戦。
「居場所を知る判定」から始めるゲームなのに、これで情報共有しあって友好的に協力し合って円満解決を望むのは、プレイヤーレベルの全ブッチャケが無ければ不可能だろう。
 
 ちなみに、真の使命の達成や、生き残ることなど、いくつかのチェック項目があり、これによって経験値が大きく変わる。つまりプレイヤーレベルでも奪い合いが激しい。
 全員がぶっちゃけOKな草食系でも無い限り、コンベで初見のメンツ同士だと円満解決にはならない。
 そしてそれはシステムの傾向と反する。
 
 ドラマだ、葛藤だ、ロールプレイだとがなりたてる連中にはいいのかもしれないが、初見の他人のキャラの目的と経験値を蹴落として遊ぶことをシステムから要求するのは、さすがにどうかと思う。
 
 例えばこうだ。
 PC1の真の使命を知っていれば、PC4がPC1と戦う必要は無かった。無知とすれ違いが戦いと死を招いた。
 あぁ、たった一言のやり取りさえあれば…
 
 ……なんつーか、三文芝居くさくねぇか?
 いや、事実そうだし、GMっつーかシナリオっつーか、システム選択の時点でワナじゃん。
 
 あと、他のPLも言っていたけど、目的と真の目的さえあればGMイラネー。ランダム決定表で充分。
 GMの労力削減にはいいかも知らんけど、存在価値まで削減しちゃダメでしょ。
 
 ***
 
 とまぁ、ここまでカナリ酷く書いてきたが、こうして文字にして並べてみると、システムから、つまり、デザイナやシナリオ作成の立場から対立や葛藤を仕込むとなると、このシステムの方法というか構造はかなり正しい。
 
 つーか、他にどんな手段があるだろうか?
 たぶん、あんまり無いよね。
 
 うん、つまり、手法は正しくて、ルールという媒介も正しく記述されている。このデザイナはゲームを作るのが上手い。
 あ、全く触れていなかったけど、戦闘ルールも独自かつシンプルかつ優秀。10段階評価で10がつけられる。
 
 しかし、このゲームをコンベで一日プレイして、PLの経験値とPCの目的を蹴落とされた人も含めて、みんなが楽しい顔で帰れるだろうか?
 
 ある冷静なゲーマーが言っていた 「ドジッ娘なんて現実にいたらウザイだけだ」 と同じように、プレイヤーレベルでの対立をゲームの構造やキャラの判定まで関わる部分にまで仕込まれたら、それはもう「現実にやられたらウザイだけだ」。
 ドジッ娘の後始末で、毎日カップを買い足したりコーヒーの染み抜きをする金銭的 / 現実的な手間は、正直ウザイ。
 
 そういや、ガンダムWの時も似たようなことを思った。デュオは人気キャラだけど、テーブルトークであの立ち位置だったら悲惨だなと。自分が中の人になるとしたら、アレは最悪だなと。
 
 あー、あと、最後にメイク中に生まれた名言を。
GM「みんさんは中忍でゲーム開始となります」
PL「ぜったい厨忍だよね」